虚空書庫

にんげんになりたい

問題のない生徒

問題のない生徒

 

無駄に緊張する 個室での面接 

先生は 資料を見て 

「特に、問題はないですね」

 

いつも そう 当たり前だ 

全ての教科が だいたい平均 なのだから

 

平均点さえ 取れば 文句は 言われない

 

優秀すぎず バカすぎず そこそこ できる 

取り立てて 大きな欠落の ない 

問題のない 生徒

 

期待も されず 追及も されず

なにも 起きない 起こされない

 

遅刻癖も 校則違反も なく

友達と対立する様子も ない

先生の話も 真面目に 聞く

 

やや 孤立気味だが 

友達が全く 一人もいない と いうわけでも ない

 

消極的な 

元から 物静かな 特に 問題のない 生徒

 

「こちらから、特に言うことはないのだけれど」

そう 見せている から

見せていない 問題は 山のように あるけれど

先生には 見えない

 

毎日 死にたい ことも 何も 楽しく ないことも

突然 涙が 止まらなく なることも

喉が 詰まって そのせいで ほとんど 話さない ことも

自分に 絶望して いることも

両親の 諍いに 疲れ切って いることも

卒業後の 進路の希望が あの世で あることも

将来の夢など なく 申告は 全て 嘘であることも

脳内で 自分を 滅多刺しにすることが 日課だと いうことも 

 

知らない

見せて いないし 見せたくも ない

知られたく ない

 

ただ 一人の 問題のない 生徒として

通り過ぎ 卒業し さよなら したい

 

「何か、言っておきたいことはある?」

「いや、特には」

 

ありません

ありますが 言えません

言っても あなたに 解決は できません

あまりに 込み入っていて 説明 しきれない

 

家族の 汚点 だから 自分の 欠点 だから

 

どうせ 何も 出来ない

誰も 分かって くれない

助けようが ない

変えられ ない

生きるのが 苦しい なんて 言えない

 

命を 断つ 以外に 

楽になる 方法は ありますか

 

聞けない 

そんなこと 口が 裂けても

 

だって 私は

特に問題のない生徒 だから

 

「そうですか。じゃあ、次の学期も頑張って」

「はい」

 

終わった すぐ終わった 

無意味な 時間

 

私は もう少し ずっと 

生きている間は きっと

 

特に 問題のない生徒を 

問題の 見えない 人間を 

 

演じ続けるの だろう

 

電池が 切れる まで

 

 

 

対面 しても 

私は いない

 

先生は あのとき 誰と

面接 してたんだろう

 

なんて

 

 

(記憶を文章にすると長すぎるので、そうだ詩だ!と思って作ってみたものの……別に短くなかった。供養)